平静を必死で装って、洸さんの目をジッと見つめてみる。

ちゃんと答えるまで、絶対逸らさないから。


洸さんはわたしの顔をしばらく眺めてから、片眉をクイッと持ち上げた。



「海ちゃんは、そうだなぁ。 かわいいよ?」



えっ

自分でもあからさまに喜んじゃったのがわかる。

洸さんはそんなわたしに、小さく笑うとソファの背に頭をもたげた。


「でも。かわいいと俺の“そそる”ってのはまったく別」

「……べつ?」

「別です」


う……。
念押された……。

わたしって、留美子いわく、極端なんだって。
好きなヒトに対して、気持ちの表し方が極端。

牧野の事は、好きと言うか。
留美子と両想いだって思ってたから、自分の気持ちにブレーキかけていたわけだけど。


「いっそ妹になる? 俺の」

「絶対やだ」

「わ、即答。 傷つくなぁ」

「……」


完全に話そらされた。


あーあ、妹か。
自分の気持ちを認めた途端、妹宣言されるなんて。

もういいや、寝よ寝よ。
今日のわたしは変だ。ふわふわしてて何を言い出すかわからない。

頭冷やさなきゃ。

立ち上がった。

と、その時。



――ガッ


踏み出した足が、思いっきりテーブルの角にぶつかった。


「いたっ!」


バランスをなくし、視界は一気に反転する。
わたしはそのまま、勢いよくダイブしていた。



「っ……」