そんな私に嬉しそうな顔を見せる上條さん。
上條さんの口元近くには今だ私の手の甲があり、上條さんが話すたびにその吐息が私の甲にかかってくすぐったい---
「ほら、敦って呼んでみて」
「……あ…、つし…さん…」
なんかもう…、
照れくさいんですけど---
名前を呼ぶ私に満足したのか、名残惜しそうに私の手をそっと離す。
それでも顔は嬉しそうに頬を緩めていた。
そんな敦さんの事を見ていると、遊んでばかりいる人なのに本気で言ってくれてるのかな?
なんて思ってしまった。
呆けていると、前方から女性がマイクで始まりの挨拶をした。
いけない…、
もう始まったんだ---
敦さんに手を離してもらった私は背筋を伸ばすと、その女性に視線を向けた。



