Blood Tear



 「あぁぁーー!何でこんな事!」


不満げに叫ぶのは眉間に皺を寄せるレオン。

彼は何故かロープを引く。


と言うのも、沼に落ち込んだ馬車を引き上げるのがシェノーラからの頼みだったのである。




 「叫んでないで仕事して下さいよ!」


レオンの声に反発するように馬車の後ろから声がする 。


顔が見えなくともわかる。

この声は紛れもなくイースのものである 。




 「何だと!?このーー」


 「レオン」


その声にロープを投げ捨てる彼だったが、隣からの声に動きを止めた。

落ち着いた声の主はコウガ。




 「お前は頭にこないのかよ?」


気を静めロープを握り直し問う。

すると彼は一度息を吐くと口を開いた。




 「正直、腹立たしい」


 「え!?」


彼の言葉にロープを手放しそうになる。


常に冷静な彼の思いもしない言葉に驚いていた。



一方コウガは彼の反応に首を傾げる。




 「まぁ人助けだし、仕方ないかなって」


 「……そっか」


優しい瞳で言うと再びロープを引き始めた。