Blood Tear



 「いや~、助かりました」


ご機嫌な様子で前を歩くのは藍色の髪の男性。

ニコニコ微笑み鼻歌を歌いながら道を歩く。



それに続くのは陽気な男性についていけないコウガ達 5人。




 「本当に大丈夫なのか?」


こっそり問うのは不安そうな面持ちのレオン。

男性に聞こえないよう隣のコウガに囁いた。




 「絶対に…とは言えないが、リオンの言う通り悪い奴 じゃないと思うんだ」


後ろ姿を見つめながら言うと、男性の可笑しな雰囲気に耐えかねたのかクスリと微笑む。


微笑む彼につられ、レオンも口元を緩ませる。



そんな彼は眩しい太陽を見上げ思い切り伸びをした。




 「何ニヤニヤしてるんでしょうね……?」


 「楽しそうではないですか」


リオンを2人から遠ざけようとするのは眉間に皺を寄せるイース。


一方リオンは和やかな雰囲気に華奢に微笑んだ。




彼の笑顔を見たのは何時ぶりだろう。

緊迫した旅の中、何時も何かに脅え逃げてきた。

そんな中、笑った事など一度も無かった。


嫌、それ以前から心から笑った事があっただろうか…



神に近き者として縛られ、笑うことすら忘れてしまった彼が今、笑っている。

心から、1人の子供のように笑っている。



何故だろう…
涙が零れそうだった…


悲しい訳じゃない。

只、嬉しいだけ。




彼の笑顔が見れて。

彼が楽しそうで。

彼が幸せそうで。

嬉しいだけ…




 「本当に……本っ当に楽しそうで何よりです!」


目一杯空気を吸い元気に言うと無邪気に笑った。

幸せに溢れる子供のように。




その後方、少し離れた位置から彼等を眺めるのは表情一つ変える事のない女性クレア。


珍しく何も食べていない彼女は決して彼等の輪の中に入ろうとはせず常に一定の距離を取る。



5人を捉える赤い瞳を一度閉じ、ゆっくりと深呼吸をするとハラリと舞い降りてきた木の葉を掴む。


それをグッと握り締めた後手放すと、再び風に流されて行くのを見届けるのだった。