驚かせるなと呟きながら、キョロキョロと辺りを見回す栗鼠に歩み寄るレオン。
「か、可愛い!」
栗鼠を目にした瞬間そう言葉を発し駆け寄って来たのはイース。
後一歩で栗鼠に触れられる距離となったその時だった…
「どうも~!」
先程栗鼠が潜んでいた茂みから突如として現れた人物。
思いもよらぬ出来事に驚いたイースは尻餅をつき急な坂道を転げ湖に落下した。
「どうも、どうも、どうも、どうも、ど・う・も! 」
屈んで栗鼠に手を伸ばすレオンに、派手な音を立て湖に落ちたイースに、イースを心配し駆け寄るリオンに、何事かと片目を開けるクレアに、そして最後に鋭い眼差しのままのコウガにと、一人一人挨拶をする。
コウガに顔を近づけニッコリと微笑みリズムをつけて挨拶したのは、 真っ白なワイシャツを腕捲りし、黒のネクタイを緩く絞めた空色の瞳の男性。
見知らぬ人物に反射的に剣を手にしたコウガは無駄のない動きで素早く剣を振り上げた。
目にも留まらぬ速さ。
普通ならば腹部から斜めに切り裂かれるか、避けたとしても完全には避けられず深手を負う。
それ程の攻撃。
だがコウガの剣は何の重みも感じる事はなく、生暖か い鮮血も舞わない。
正面の人物を目にし驚きの表情を見せるコウガ。
男性は何事も無かったようにニコニコと笑みを浮かべたままコウガを見つめる。
コウガの攻撃をたった一歩後ろに下げ無駄のない最小 限の動作で交わした人物。
何者なのかと眉を潜めていると、彼は戦う意志はないと両手を挙げヒラヒラと降って見せた。

