そうなる筈、だった。
「あ、あれ…?」
しかし現実はそう上手くはいかないもの。
巻き起こるのは小さな風。
レオンの灰色の髪を揺らしただけの微かなものだった。
少し身構えていたレオンは頭をかき首を傾げ、 箒を見つめた状態で固まるイースへと目を向ける。
拍子抜けな顔をする彼女は羞恥からか一瞬の内に顔を真っ赤に染めた。
「う、うわーー!」
耳まで真く染めたイースは箒を握り直すと無闇やたらにレオンを殴る。
その攻撃を腕で受けるレオンは鬱陶しそうな顔をするのだった。
「ある人に…」
「?」
暴れ出したイースを見つめていたリオンは突然口を開き呟いた。
その呟きにコウガは首を傾げリオンへと目を向ける。
リオンは一度コウガを見つめた後、どこまでも広がる 青空を見上げた。
「ある人に会いに行くんです…大切な時を取り戻す為に……」
遠い目をした彼の瞳は悲しみと希望を含んだ色をする。
そしてその奥に宿るのは、とても強い決意の光。
太陽を見つめる彼の姿は、どこか不思議と大人びて見えたのは気のせいか。

