身仕度を整えると宿を出る。
眩い光に目を細め、暖かな日差しを浴び背伸びをする 。
ふと、コウガの瞳に映る何者かの姿。
揺れる銀色の髪。
色白の肌に赤い瞳。
塀に腰掛け果物を食べるその人物はとても綺麗で絵になる。
「君は……」
足を止め呟くと、その人物はコウガに気づきピ ョンと塀から飛び降りた。
軽やかに着地するとコウガと向き合う。
「…昨日は、ありがとう……」
「俺は何もしてないよ。それより、怪我は?」
決して目を合わせずにそう言うと頭を下げる。
そんな彼女の身体を心配し訊ねると驚いたような顔をする。
「…もう、何とも……」
「そっか、良かった」
小さな声で言う彼女に微笑むと、何故か彼女はボ ーっとその笑顔を見つめていた。
不思議に思い首を傾げると、ハッとしたのか咄嗟に俯く。
「…貴方と居れば、また彼奴に会える気がする。だ から――」
目を背けたまま呟くように言う彼女は言葉を止める。
何故なら、彼女に歩み寄ったコウガは右手を差し出し ていたからだ。
「一緒に旅しよう」
そう言い差し出された右の掌。
暫くジッと見つめ、その後視線を上げる。
瞳に映ったのは優しく微笑むコウガの姿。
その笑顔は爽やかで、輝いていて…
見とれてしまいそうになる。
「…いいの?」
赤い瞳に見つめられながら、もちろん。と頷くと彼女 の手を取る。
そして、よろしく。と微笑んだ。
彼女の名はクレア・シンク。
サラサラとした銀色の長い髪。
色白の肌に映える赤い瞳。
赤目の死神と呼ばれる彼女はその名の通り巨大な鎌 を持つ。
少し離れた場所から2人を眺めるレオン。
彼女が苦手な様子の彼は溜息をつきながら乱暴に頭を
掻くのだった。