頬を拭ったライアはその手に付着する赤い液体を不思議そうに見つめた後、剣を振り下ろし肩で息をするコウガを鋭く睨む。




 「いったいなぁー。何するのさ」


 「黙れ…もうお前の虚言など聞きたくない!」


 「虚言ね……信じたくないのは分かるけど、そろそろ素直に受け入れたらどうだい?君だって気付いていた筈だよ、彼女の変化に」


怒りを露わに声を荒げるコウガ。

そんな彼を臆することのないライアは挑発的に指先の血をペロリと舐めて見せる。




 「それとも、気づかなかったとでも?ハハッ…それでも恋人?有り得ないって」


 「煩い…!」


馬鹿にするように笑われ、コウガは床に突き刺さる剣を引き抜くとそれを斜めに斬り上げる。

その攻撃を身軽に避けたライアは彼の態度に確信する。


彼は何も知らないのだと。

彼女の変化にも、彼女の心の叫びにも、何も気づいていなかったのだと。




 「そうか…そうだよね……だから僕に助けを乞うたのか……頼りにしていた恋人が役に立たないから、それで僕に協力してくれたんだね……」


1人納得するライア。

何が可笑しいのか声をあげ笑い出す。