腰までの黒髪に藍色の瞳。
胸の中に収まるこの女性の事を、俺は知っている。
忘れる筈もない。
忘れる筈があるものか。
だって彼女は、彼女は俺の、俺の大事な人なのだから。
「…コウガ……」
彼の身にすり寄る彼女の名はアリア・ダージェス。
コウガの知人であり彼の恋人。
久々の再会に涙を流し喜ぶアリアだが、それに対しコウガは動揺しており、彼女の背に腕を回す事は無い。
「コウガ……?」
「…誰だ……君は……君は一体……何者なんだ……?」
胸の中の彼女を押しのけ後退る。
身を離した彼は首を傾げる彼女へと問い掛けた。
「どうしたのコウガ?私だよ。アリアだよ」
「嘘だ…アリアは……アリアは――」
――アリアは死んだ…
此処で…
この場で、彼女は死んだ…
俺の目の前で、君は…
君は、死んだんだ…
その身を貫かれ、多量の血を流しながら燃え盛る炎の中姿を消した。

