「心配しなくて良いよ、スティング」


窓辺に歩を進めたライアはスティングの心情を読み取ったように語りかける。


開けた窓からは冷たい夜風が舞い込んだ。




 「君は僕の唯一の理解者。彼等のように使い捨てる気はないから安心しなよ。まぁ、君が僕を裏切るようなら別だけど」


そう言う彼の瞳は見えないが、フードに中のそれはスティングを睨んでいるように思えた。

とても冷たく、とても鋭く。

裏切る事など許さぬように。




 「争う事など互いに望んでなんかいないし、君は僕に逆らったりする訳がない。利用するだけ利用させてもらうよ、スティング」


クスリと笑うと背を向け、窓の外へと目を向ける。


見上げる空に浮かぶのはその身を細くさせた三日月。




 「光が消え行くような姿だね。闇が光を喰らっているようにも見える。とても幻想的な夜だ」


頬杖をつく彼を照らすのは仄かな月明かり。


吹いた夜風は青白く染まった素肌を掠める。


フードから覗く口元は、終始笑みが零れていた。


とても楽しそうに、何かを待ちわびているように。