Blood Tear



レグルの言葉に笑みを浮かべたマット。


足を止めた彼を見つめるレグルは目を細める。




 「確かに、人工生命体をも簡単に創り出せる僕は神になるべき存在なのかもしれない。でも、そんな面倒くさい事には興味ないな。僕は只、研究さえ出来ればそれでいい。 ライアはこの世を滅ぼすとか言ってるけど、勝手にどうぞって感じなんだよね。大体、僕は化学者なんだから、戦闘に巻き込むなっての」


クイッと眼鏡を押し上げた彼は何かブツブツと独りで文句を言い出した。




 「お前の研究はライアからの指示ではないと?計画の一端ではないのか?」


 「これは只の趣味だよ。だって楽しいじゃん。何かを創り出しそれを自ら壊す。これ以上の快感はこの世に存在しないよ」


狂ってる。

彼はおかしい。

一本…否、何本ものネジが外れている。



彼の考えが理解できない。

否、理解したくもないと言う方が正しいのか。



創り出したものを壊す。


その言葉にある記憶が蘇る。

それはまだ新しい記憶。

まだ鮮明に思い出せる記憶。

零れた雨水が湖に波紋を広げた、あの日の記憶。