森の中に佇む小さなカフェを目指し、エルウィンの手を引き歩くエレナ。
彼女は肩越しに振り返り、2人の後を着いてくるレオンを睨む。
「そんで、何であんたが着いて来とんや?」
「ん?まぁ、久々にお前の料理でも食ってやろうかと思ってな」
「食わんでええわ!」
担いでいたフライパンを振るうエレナ。
しかしレオンは身を屈めてそれを交わし、顔を上げるとニッと笑う。
振るった攻撃が空振りし、微笑むレオンの顔を目にしたエレナは足を止め、繋いでいたエルウィンの手を放すと拳を握る。
「ぐはっ……っ……!」
その拳は油断していたレオンの鳩尾に的中。
腹を押さえ膝を折る彼は痛みに耐えながらエレナを睨む。
が、彼女の隣でクスリと静かに微笑むエルウィンの姿を目にし、安心した彼は笑顔をつくる。
信頼できる人を見つけ、やっと居場所を見つけた彼女。
人に生かされる奴隷ではなく、人として、1人の人間として新たな一歩を踏み出した。
不意に吹いた穏やかな風は彼女の背を押し、暖かな日差しは彼女を優しく包み込む。
雲一つない澄んだ青空は彼女を静かに見守り、眩い太陽は彼女の行く先を明るく照らした。