マットの手の中で、ドクリ、ドクリと規則正しく動くそれは、紛れもなく人の心臓そのものだった。
「っ……ぅぅっ……くっ…」
傷口は塞ぎかけてはいるものの、苦しそうに息をするアンバー。
彼の手の中の心臓へと手を伸ばすが、それを掴む前に彼はそれを握り潰す。
「っ……!」
グシャリと黒血を飛ばしながら潰されたそれは機能を失い動かない。
その瞬間翡翠の瞳は見開かれ、伸ばされた手はダラリと落ちる。
背を木の幹で擦りながら座り込むと、ビクビクと何度か痙攣した後、遂には動かなくなってしまった。
「へぇー、こうすれば綺麗なままで残るんだ。ま、こっちの手が汚れるけどね。ハハッ、ハハハハッ」
汚れた手を白衣で拭うが、既に白衣も汚れている為意味をなさない。
今までホムンクルスの処分は形の残らなくなるまで焼き尽くして行っていた。
しかし、今回は心臓を体外へと取り出し、使い物にならないよう握り潰したのだ。
大概の怪我は回復できるが、心臓までは自己回復できないホムンクルス。
その為、見た目は何ら変わりないのだが、心臓を失った彼女は機能を失い、生命活動を停止した。

