破片が飛ぶ。
木葉が舞う。
小鳥が羽ばたく。
しかし、鮮血が散る事はない。
鎌が半分以上木の幹に突き刺さり、ミシミシと音を立て倒れていった。
獲物を仕留め損ねたクレアは舌打ちをすると、鎌を肩に担ぎ振り返る。
身を屈め一瞬の隙をつき逃げ出したコウガの姿が遠くにあった。
彼は穏やかな表情で彼女を見つめている。
未だに武器を手にしない彼に苛立ちを抱いたのか、彼女は拳を握り鋭く睨む。
「…クレア、俺は君を信じてる…だから、次の攻撃を避ける気はない……」
賭けだった。
生死をかけた、賭けだった。
正気を失う彼女に賭けるなんて、馬鹿げた行動なのかもしれない。
殺す気でいる彼女の攻撃を真っ正面から受けるなんて、このな選択間違っているのかもしれない。
だけど、彼女を信じたかった。
否、彼女を信じなければならないと、護らねばならないと、そう思ったんだ。
だから、彼女の全てを受け止める為、賭けに出た。

