Blood Tear



悲しそうに目を細める彼女の隣に腰掛けるコウガは彼女の話に耳を傾ける。




 「…地も、家も壁も、草も石も血に染まり、灰色の空さえも真っ赤に思えたあの日……荒れた地に死体が転がり、広がる血溜まりの中に、身体を血で染めた私は1人佇んでいた……

忘れそうになると蘇る……心に宿る闇へと手を伸ばし、血に狂い一族を皆殺しにした残酷な自分の姿が、鮮明に目の前に広がるんだ……」


赤い湖面に映る自分を見つめ呟くと、自分の存在を確かめるように膝を抱き身を縮める。


幼い頃から心のどこかに闇を抱え、その闇に手を伸ばせば楽になれた。


だが、闇に手を伸ばせば自我を失い血に狂い、人を喰らう化け物と化す。


それが嫌で、クレアは1人足掻き正気を保ってきた。


なのにあの日、彼女は闇に身を任せ、一族を皆殺しにしたのだ。




 「…怖いんだ……また何時か血に狂い、誰かを殺すんじゃないかって……貴方達の中の誰かを殺してしまいそうで、怖い……」


顔を埋め消え入りそうな声で言う彼女の身体は微かに震えていた。