西に沈みかけた太陽が空を赤く染める頃、町の中をコウガは1人で歩いていた。
考え事をしているのかゆっくりとした足取りである。
ふと人気のない湖へと足を向けると、彼は何かに気づき足を止めた。
湖の傍に1人腰掛ける、銀髪の女性。
湖面を覗く彼女を知るコウガは湖へと歩み寄る。
「クレア……?」
後ろからそっと名を呼ぶと、突然の事に驚いたのか彼女はびくりと身を震わせ振り返る。
その色白の頬には涙の痕。
瞳に溜まった雫が一粒零れ落ちた。
潤んだ瞳を目にし、コウガは一瞬息を止める。
「これで二度目だな…泣き顔を見られるのは……」
彼から目をそらすと涙を拭う。
そう言えば、以前も彼女の涙を目にしていた。
初めて出会った頃、海を見つめる彼女は泣いていたんだ。
「思い出すんだ…あの日の出来事を……全てが真っ赤に染まった、血濡れたあの日を……」
呟く彼女が見つめるのは、夕日を映し赤く染まった湖面。
確か以前も、彼女は夕日に染まる真っ赤な海を見つめ泣いていた。

