治療をしてくれた彼に礼を言うと微笑む彼女。
他人を心配させまいと顔に浮かべるその笑顔は痛々しく、彼の胸を締め付ける。
「これ以上、無理しないで、シェイラ……」
微笑む彼女を悲しい瞳で見つめると、そっと胸に抱き寄せる。
彼の胸に収まった彼女は数秒目を閉じ寄り添うが、ゆっくりと目を開け眉を寄せながら彼を見上げた。
「ごめんなさいジーク。私は皆さんの力になりたいのです。だから、貴方のその願いを聞く事は出来ません」
彼の胸を押し離れて行く彼女。
そんな彼女がどこか遠くへ消えてしまいそうで、彼は無意識に手を伸ばす。
しかし、宙を舞ったその手は何も掴まず降りていく。
「…私、クレアさんの様子を見てきますね」
彼の伸ばされた手に気づいていたが、その手を掴まなかった彼女。
悲しそうな瞳から目をそらすと、彼女は逃げるように姿を消した。
1人取り残された彼は無言でその手を見つめるとぐっと握り締める。
天井を見上げ目を瞑ると、深く深く息を吐くのだった。

