Blood Tear



上機嫌に再び包丁を握ったシェイラ。

鼻歌混じりに林檎の皮を剥くが、




 「痛っ……く、ない……?」


手を滑らせ指を切ってしまった。


しかし、痛みを感じない。



血の流れる指先を不思議そうに見つめ、目を細める彼女。


様子のおかしい彼女に気づき、ジークは歩み寄ると心配そうに声をかける。




 「大丈夫ですか?」


 「…はい、心配いりません。手を滑らせてしまって」


未だ指を見つめる彼女の手を取りハンカチで傷口を押さえると、彼は絆創膏を取りにリビングへと姿を消す。




 「痛覚を、失ってしまったようですね……」


治癒の力を使った事による代償。

重体のクレアに治療を施した際、膨大な力を使った彼女は痛覚を奪われたようだ。


1人呟く彼女の元に戻ったジークは彼女の言葉を耳にしながらも、何も言わずに絆創膏を巻く。