「他に希望は?」
「赤目の死神は彼に任せたらいいかと」
ライアの問いにマットは椅子を回転させフリードへと向きを変えるが、既に其処に彼の姿はない。
「あれ……?」
「彼なら帰ったよ」
「話が終わったら直ぐにね」
フリードが姿を消すのを見ていたカンナとナギ。
彼を止めなかった2人は笑って見せる。
勝手に姿を消した彼を知り、スティングは溜め息を吐くとライアに問う。
「本当に彼奴を仲間に入れる気か?」
「マットの言う通り、彼には死神を殺してもらう。その為の存在なのだから。何か問題でも?」
「嫌、只彼奴はその名の通り自由な奴だ。何を仕出かすかわかったものではない」
ライアを睨むその瞳を鋭く尖らせるが、彼は考え直す気はないようだ。
微かに覗く小さな唇は笑っている。
「問題ない。不要になれば消せばいい。只それだけの事」
冷たく言い放ち狂ったように笑う彼等を見つめるエルウィン。
彼女は一言も言葉を発する事なく爪を噛む。
その姿を瞳に捉えたマットは口の端を吊り上げ笑い、手を振りながら椅子に乗ったまま自室へと戻って行った。
「彼は化学者だからね、この話に興味はないか。カンナギとエルウィンは何かあるか?」
「うーん……強いて言うならあの死に損ないかな」
「そうだね、彼かな」
「て言うか、彼しかいないじゃないか」
「そうだね、彼しかいないね」
窓枠から飛び降りたカンナとナギ。
ナギの言葉にカンナは適当に返事を返す。
眠いのか欠伸をすると2人はリビングから出て行った。
微笑むライアはエルウィンへと目を向けるが、彼女は何も言わずに窓から出て行こうとする。
特に意見はないのかと思ったが、彼女は出て行く寸前で言葉を発す。
「私の獲物は決まってる。初めから、その為の存在なのだから……」
振り返る事なく言うと、窓枠を飛び越え姿を消すのだった。

