「あら、龍?眠れないの?」
「るせぇ。美珠との初デート、何があった?」
廊下に出たら、部屋に帰るところだったらしい千煌に会った。
千煌は俺の言葉を聞いて心底不思議そうに小首を傾げたあと、天使のように笑って答えた。
「美珠ちゃんったらね、“アレキタイプ・ガーネット”を欲しがったの。『ここだけは絶対譲れない』ってね。けどどれだけ探しても“アレキタイプ・ガーネット”は見つからなかった。当然よね、私が隠すように言ったんだから」
「何でそんなことした?」
「“アレキタイプ・ガーネット”の石言葉は“昼と夜の変貌”よ。意味、解る?」
そう、千煌だから。
千煌だからこそ、それを全力で拒んだわけか。
「千煌がオカマだから……」
「正解。抱かれたがってた美珠ちゃんを抱くことはしなかったわ。私と付き合ったのが最後なら、美珠ちゃんは処女、ね」
それは嬉しいような嬉しくないような、結果。
