「アリス」


「何?」



あたしの頭をかすめたのは「面倒なのに捕まった」って事実で。


何を言っても付いてくるのは容易に想像できたから、あたしは雨の中を駆け出した。



もちろんそいつも付いてくるわけで。


周りにいた人は仲良く鬼ごっこくらいにしか思ってなくて、あたしを助けてくれる人なんていなくて。



駅の改札が見えたからあたしの勝ちだと思った。


その一瞬の隙を突かれて、あたしはそいつにがっしりホールドされてしまった。



「ちょっと!放してなさいよ!!」


「俺さ、アリスが好きなんだよね?」




世界は一瞬で色を変えてしまった。