ウキウキしながらエスカレーターを昇る。
びしょ濡れの男子高校生や、口論してるカップルとすれ違うけど、あたしの心はちっとも憂鬱でなくて。
でもあたしは気づいてなかったんだ。
あたしを見つめていた、その視線に。
「あー、アリス遅いよー」
「スマホの時計止まってるの気づかなかったの。ごめんね」
「いんや、俺は良いんだけどさ」
アリス授業サボって平気??ってぼやくこの人はアヤ。
あたしの親友で一人称が俺の、さばさばした女の子。
そんなアヤと話すのに夢中だったあたしは、あたしを見つめていたその視線に気づいていなかったんだ。
