「若!こんなところで油売ってたんですか?」
「るっせぇな。俺の勝手だろ」
良家のご子息の家出かな、くらいに微笑ましいことを思ってたら。
その返答があたしの耳元で奏でられた。
「第一誰です、その女」
「すっげぇ見窄らしいじゃないッスか。若の好みとは真逆も良いとこです」
「えぇっと……?」
これはどういう状況かしら。
抱き上げられたまま電車を降りたのは覚えてるんだけど、誰この人たち。
「若、嫁探しも良いですけど仕事はちゃんとしてくださいよ」
「散れよ、お前ら」
不機嫌そうな天使さんの声。
あ、やっと解った。
“見窄らしい、若の好みとは真逆の女”ってあたしのことだ。
