「悪くない取引、だな」



女は今にも泣きそうな、大きな瞳で俺を睨みつけた。


抱けるなら抱いてみろ、そんな挑戦的な瞳で。



「アヤ、絶対逃げ切ってね」


アヤと呼ばれた女にバッグを持たせて。


「幸せに、なれよ」



誰よりも格好良く、言ってのけた。


この女が龍矢のモノでないのなら、俺が欲しいくらいだ。


芯がしっかりしていて、肝が座ってる。


緊急時であれば自分の命より相手の命を優先する。



何で俺はこんな女と知り合えなかったのだろう。