~誘拐犯side~
『取引、しませんこと?』
龍矢の女らしき、小柄な女はそうはっきりと言った。
短躯で頭の回転の悪そうな、そんな女が。
どうやらこの女の精神は“退けぬなら中央突破じゃ!”らしい。
「アヤを、開放してください」
それは俺たちに有無を言わせぬ威圧的な物言い。
侮ってたけど、この女、実家がヤクザだったりするのか?
龍矢の隣にいるってだけで、こんなに強くなれるものなのか??
「嫌だと、言ったら?」
それは綺麗なハイソプラノで。
しかし何かを諦めた物言いで。
「“私”を、差し上げます」
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