カウンターに戻って来ていた恭司の目にもそれがわかった。

携帯電話を耳にあてた大輔の傍に恭司が来ると、そのすぐ横で静を支えている綾の姿が見えた。


「静さん?」

「恭、大変なの。おなかがすごく痛いみたい。座布団か毛布みたいなの、持ってきて!」

「え、あ、わかった」


恭司が休憩室のほうに向かおうとした時、その視界に百合の姿が入った。


「恭、わたし――」


百合が居ることに驚きながらも、恭司は無言で百合の横を走り抜けていた。