「東京を出てね、この町に来て、居酒屋で働いているの。そこの人の紹介で、さっきの堀川大輔さんからCDジャケットのイラストの仕事をもらえて、今日はその打ち合わせでここに来たの」

「俺はさっきここに居た静さんに呼び出されてさ」

「恭に初めてここに連れてきてもらった時、挨拶してくれた人だよね。すぐに分かったけれど、静さんは私に気付いていなかったみたいだから――」

「いや、静さんは綾が来る前から知っていたと思う。そうか、大輔さんが――」


恭司は振り返って大輔の姿を捜した。

少し離れた席に移動して飲んでいる大輔が恭司の視線に気付き、グラスを恭司に向けて乾杯する仕草を見せ、ビールを飲む。

恭司は口元を緩め、握りこぶしで乾杯に応えていた。

綾に気付いてくれて、そしてこうして逢わせてくれた大輔の心の大きさに感謝した。