恭司が今も一人でいることを告げると、綾は重ねていた手を離した。
お互いに少し落ち着き、急に照れ臭くなってしまった。
もう二人には、互いの想いを告げるのに足踏みしなくてよいことに気付いた。
でも、その足をどう踏み出せばいいのか。
今の恭司は、綾と出逢った頃の自分のように言葉に出来なかった。
あの頃の余裕の無さから来る行動力を少し懐かしくも感じた。
一方、綾は本当の自分の気持ちを素直に伝えられないままに、恭司と連絡が取れなくなってしまったことの後悔が、いつも胸の内にあった。
どんなに大人ぶって自分に言い聞かせてきても、心の中にどうしても思い通りに出来ない感情が居座り続けていたからこそ、今この土地に居るのだ。