言葉を発した途端に、涙が零れ落ちてしまった。

恭司の右手に重ねた手を離してしまうと現実ではなくなってしまいそうな気がして、綾は自分の涙を自分で拭うことが出来ずに瞼を閉じた。

その綾の涙を恭司の左手が拭う。

綾はそっと目を開けて、覗き込むように自分を見ている恭司が居ることにほっとしながら微笑んだ。


「元気だった? 少し痩せたみたいだけど」


「うん。元気だよ。色んなことがあって、世の中にもまれたから、ちょっとやつれて見えるのかな」
 

肩を竦めて綾は笑う。

自分の今までのことが、この瞬間に繋がっていたのなら、すべて許せるように綾は思った。