康則と恭司の仲の良さは百合もよく知っている。

だからこそ康則の妻である静は、百合にとって敵にはしたくない存在だ。

しかし、百合は静が大の苦手である。

大輔とのことを知られていることもあるが、百合にとって静ほどその存在を嫌味に感じる相手はいなかった。

それはあの河原綾に対してよりも強く感じているかもしれない。

特に何かに優れていると言う話を耳にしたことはないが、静はいつも自信に満ち溢れているような表情で、誰からも慕われている。

同性の多くから慕われている康則と結婚してからはなおのことだ。

妊娠して仕事を辞めた今、静は専業主婦という地味な存在のはずなのに、自分より社会に必要とされているように百合には感じてしまう。

自分とはまるで違う。

だからコンプレックスを感じずにはいられない。

でも、恭司はまるで実の姉のように彼女を慕っているから、どうしても上手くやっていかなくてはならないのだ。