百合が話した、駅のホームで、スケッチブックを開いて――。 「河原――、綾さん?」 「はい?」 そうだ、この人だ。 大輔は今頃気付いた自分の鈍感さに驚いていた。 この人が、あの河原綾だったなんて。 ただ名前を聞いただけでは思い出せなかったのは、七年という月日の長さだけではないような気が大輔にはしていた。