その言葉を聞いて綾は瞳を輝かせ、持ってきていたスケッチブックを開いて、色鉛筆を手に取った。

その仕草を見た瞬間、大輔の頭の中に一つの光景が蘇ってきた。

綾は緑と黄緑、赤とオレンジ、オレンジと黄色、水色と青の組み合わせでそれぞれ軽く帯状に濃淡をつけて染めたあと、大輔のほうにスケッチブックを差し出す。


「堀川さんが今回のCDに持たせたい形容はなんですか? それによってどんな色にも出来ますけど」


大輔は記憶の片隅に残っている何かを糸を手繰り寄せるように思い出そうとしていた。

目の前にいるショートカットの河原綾――。

綾――。

たしか、七年前の、あの時のあの女性も『綾』だった。