あの女が、河原綾がこの町にいる。 あの日、メテオの前で綾を見てしまった上野百合は心の中が落ち着かないままの日々を送っていた。 恭司は知っているのだろうか――。 既に会っているのだろうか。 気がつくと自分の爪を噛んでいた。 (どうしたらいい? どうしたら――) 恭司には知られたくないから、訊けない。 大輔に相談してみようかと三日考えて、大輔の携帯電話に掛けようとしたが思い留まった。