ラストオーダーの時間も過ぎ、最後の客が出て行った。

恭司がワイシャツの袖を伸ばし、背伸びをしたところに静がコーヒーを出した。


「お疲れ様。助かったわ。少し横にもなれたし。ほんとうにありがとう」

「いえいえ。これくらいならいつでも手伝うよ。働いた分はおやじさんへの見舞金に回して」

「そうする」


にっこりと微笑む静だが、何かを言いたそうにしていることに恭司は気付いた。


「どうしたの?」

「あー、うん。あのさ、恭くんのお母さんは元気にしてる?」

「母さん? 相変わらずマイペースで元気だよ。親父も元気」

「そう――。あのね、こんなこと恭くんに頼むのはどうかと思うのだけど、お願いしたいことがあるの」