「あの、河原です。初めまして」


もっと気の利いた言葉を続けられれば良かったのに、次の言葉が出てこなくて綾はただ申し訳なさそうに恭司の母親を見た。


「いつも恭司がお世話になっています。こんなに可愛らしい方を恭司が射止めたのなら、うちの息子も捨てたもんじゃなかったのね。仕事ばかりお父さんに叩き込まれて、女っ気が無いのかと心配していたけど、ほっとしたわ」


楽しそうに恭司と綾の顔を交互に見る母親の姿を、恭司も嬉しそうに見ていた。


「その顔だと、結婚も近そうね」


恭司の顔を覗き込むように母親は言う。