「この病院に姉さんが入院したのよ。胃腸炎でね、脱水があるからって。そしたら、偶然、病院内を歩いている圭吾さんを見掛けて。こんなの着ているからびっくりして声を掛けたら、私よりもこの人びっくりしてたわ」


あははっと、恭司の母は笑っている。

その背後に見える圭吾の表情は、悪さを見つかった少年のようにバツが悪そうだ。


「恭司も知っていたのなら、教えてくれればいいのに。お父さんだって見舞いに来るわよ。あ、笑いに来るかも? あはは」

「だから、内緒にしてたんだよ」


圭吾が観念したかのように言うと、恭司の母は、大きく空いていた口の前に右手を当てて、目を丸くして見せた。