「あ、えーっとパンのことよ。手作りパン。恭くんのお母さん、パン作りはプロでしょ。子供が生まれたら、いつか私も手作りパンとか作るかもしれないじゃない」

「静が、手作りパンを? それ、感動的だな」


康則は嬉しそうに微笑んでいる。


「まあね、まだやるかも? って程度しか考えてないけどね」

「そっかぁ。楽しみだな」


口元が緩む康則の顔を見ながら、静はふと康則に訊いてみたくなった。


「ヤスくんはさ、私と付き合う前に好きな人って居たよね? 片想いとかでもいいんだけど。今、その人に会える機会があったら、行く?」


突然の質問に康則が目を見開く。