男は目を伏せ、何かを考えているように見える。

そして次に百合の顔を見たときには済まなそうに苦笑いをして「――帰るよ」とだけ言った。

これ以上何か言っても、彼を引き止めることが出来ないことは、長い付き合いになった今の百合にはよくわかっていることだった。

百合は小さく頷き、助手席のドアを開ける。


「――恭、また連絡するね。送ってくれてありがとう、ね」

「ああ、それじゃ」