綾は、小さく二回首を縦に振った後、深呼吸をした。 「あのね、わたしが恭と不釣り合いな女だってこと、自分でもよく分かっているつもりなの」 来たか。 恭司はゆっくりと首を右から左へと回した。 この展開にはさすがに慣れてきた。 自分がバツイチだとか、十歳年上とか、綾が何かを理由に、恭司との境界線を越えない決意を持っていることを、ここでまた言うつもりなのだろうと恭司は思った。 まだ駄目なのだろうか。 幾つになったら、対等に見てもらえるのだろう。 もう俺は十八のガキじゃない。