「綾、顔が赤いけど」

「え、あ、あの顔が熱くて」

「もしかして、熱がある?」

 
恭司の右手が綾の額に触れると、綾はびくっと肩を縮めた。


「熱じゃないの。そうじゃなくて――」


なんだか歯切れが悪い感じだ。

言いにくいことがあるのだろう。

恭司は少し身構えた。

悪い話を言うつもりなのだろうか。

考えられるだけのことを頭をフル回転させて想像してみる。

今までの経験から、綾が言いにくそうにしている時は恭司にとって良い話ではない気がしていた。