綾のアパートに入ってからは、何故か綾がいつもとは違いそわそわしている。
最初はその様子が恭司には不可解だった。
グラスにコーラを注ごうと二人同時にペットボトルに手を伸ばしたとき、互いの指が触れた瞬間の綾の手の引っ込め方を見た恭司は、彼女が赤面していることに気付いた。
「あ、ごめん。コップ貸して」
普段通りの口調で恭司は言った。
そう聞こえるように努めた。
いつもなら、綾のほうが平然としていたはずだ。
それが今日はどうしたというのだろう。
不思議に思う分、恭司はいつもより真っ直ぐに彼女を見てしまう。
その視線に気付いているのか、綾は頬だけでなく、耳まで赤く染めていた。