「お疲れさまでした」 綾が仕事を終えて、居酒屋『どんぐり』の店内から外に出ると、恭司が傘を持って立っていた。 「お疲れさま」 「恭、どうしたの?」 「雨が降っているから、送っていこうと思って」 恭司は少し前に止めてある自分の車を指さし、自分の傘に綾を入れる。 綾は開きかけた自分の傘を閉じて、恭司の傘の下に入る。 その行動がとても自然だったのが、恭司には嬉しかった。 七年前とは違って、綾と近くなったと確信できる。