ダメもとで言ってみた。

驚いている恭の顔を見ていながらも、大輔との初めてのキスが鮮明に蘇ってきて、百合自身驚いていた。

今の私のキスしたい人は、恭ではないのだと実感した。


「――心配しなくても冗談だよ。私、大輔さんが必要みたい」


恭司は百合の顔を見ながら穏やかな表情で頷いた。


「だから、もう私に揺れないでね」

「了解」

「あと五年もしたら、綾さん四十過ぎるんじゃない? その時後悔したって知らないからね」


目を大きくして恭司は笑う。


「その時は大輔さんのことを羨ましく思うことにするよ」

「あはは」


百合は恭司の前で初めて自然に笑えた気がした。


「あははは」


笑いながら、目が潤んできた。