「今もやっぱり綾さんが好きなのね」 「それだけは変わらない気がするよ」 「でも私に心が揺れたこともあるんだよね」 恭司は口を曲げて、決まりの悪そうな顔をした。 それを見て、百合は気付いた。 恭司の優しい思いやりが、言葉と仕草に隠れていることを。 私を傷付けたくなくて、探している言葉を。 目を閉じて、百合は自分の心に問いかける。 これでもう、終わりに出来るよね――。 「お願いがあるのだけど」 「なに?」 「もう諦めるから、最後にキスしてくれる?」