恭司の言うとおり、平日の中でも、この日は際だって客が少なかった。 十時半を過ぎると、最後の一組の客も会計を済まして、店を出ていった。 「本当に暇だったね」 百合は最終オーダーの時間まで三十分ほどあることを時計を見て確認した。 「まだ、閉店は出来ない?」 百合が訊くと、恭司は少し考えながら、店のドアを開けて、外を見た。 「雨が降ってきたよ」 恭司はドアを閉めて、百合を見た。 「もう閉めても大丈夫だと思うよ」 「じゃあ、掃除始めちゃうね」 百合が言うと、恭司は頷いた。