「早く娑婆に出てぇな」


相変わらずな圭吾の言葉が久しぶりに聞けて、恭司も笑いだした。


「こういう時間は本当に良いものだな。人間らしい瞬間だ」


圭吾が目を細めてしみじみというので、恭司は調子が狂ったような顔をして綾を見る。

恭司の視線を感じ、綾は恭司を見つめた。

気持ちのままに表情が動いているのが、とても愛おしく思えた。

彼と一緒に歩いていくこと、それが一番自分の心に素直に生きていくことだと、綾は確信した。

そう思っていいのだと、圭吾の言葉が背中を押してくれたのだ。