やっと手に入れた。


大輔は百合の首筋に唇を押し当ててみた。

百合は静かに目を閉じる。


「もう納得出来たのか」


敢えて恭司の名前を出さなかった。

出さなくても百合には分かるはずだ。

彼女が長年囚われ続けていた想いは、ただ一つだったはずだから。

そして拘り続けたその場所には、河原綾がずっと在り続けた。


「納得なんかしてないわ。初めて天秤に掛けて、欲しいものより無くしたくないものがわかっただけ」