百合は携帯電話を取り出し、大輔に電話を掛ける。

二回コールしたところで、電話を切った。

今までなら、それだけで大輔から電話が掛かってきた。

しかし、今日は電話が掛かってこない。

もしかしたら、電話が鳴ったことに気付いてないのかもしれない。

でも、もしかしたら、私だと分かっていても掛けてくれないのかもしれない。

大輔に無視される日がくるなんて思いもしなかったと百合は目を閉じる。



バッグと上着を取り、百合は携帯電話を握りしめて自分のアパートの部屋を出た。

まだ午前十時で、こんな時間に大輔の部屋に行くなんて、今までなかった気がする。

でも、午後になってしまったら、今日はもう大輔に会えないような気になっていた。

不安はどんどん膨らんでいく。

昨日の言葉を聞くまでは安心しきっていた。

大輔が自分から離れていくことを想像していなかったから。