自分が高校時代からずっと想い続けてきたのは、恭司のはずだ。
それなのに、今、恭司のことより大輔が自分から離れていくかもしれないという不安で胸を占められている。
大輔の伏し目がちな笑みや、大きな手が思い浮かぶ。
恭司のために作ったものでも、黙って食べてくれた大輔の顔がちらつく。
そして、昨日少し呆れたような目で大輔が言った言葉が、また頭に過ぎる。
「どうしよう――」
無意識のままに右手の親指の爪を噛んでいる百合だった。
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