「恭に傘を持ってきたんだけど、無駄足ね」 そして百合は、大輔が想像できなかった一言を口にする。 「恭が、あの人のことを綾って呼んでいるのより、大輔さんが綾さんって言うことほうが不愉快だわ」 口を尖らせて大輔を見る百合の顔を見て、大輔は驚き、そして苦笑いをした。 「俺は百合の下僕じゃない。自分の呼びたいように呼ぶさ」 百合は明らかにショックを受けた表情を見せた。 その様子も大輔には予想外だった。 二人は言葉を失ったまま、メテオに背を向け、歩きだした。